「杜氏の挑み酒」尊皇蔵元山﨑の挑戦

2021.06.04

コロナ禍でも奮闘する、西尾の事業者の今を伝える継続のチカラ。
今回は、クラウドファンディングに挑戦中の「尊皇蔵元　山﨑合資会社」さんにお話を伺いました。

市内唯一の造り酒屋

山﨑合資会社は「尊皇」の名で親しまれ、明治36年の創業以来、豊かな自然に囲まれた幡豆の地で118年間酒造り一筋に歩んできました。看板銘柄「尊皇」を中心に様々な種類の日本酒を製造し、鑑評会等でもこれまでに数多くの賞を受賞しています。

妥協のないこだわり

尊皇では、地下水脈から汲み上げた地元三ヶ根山麓の伏流水や愛知県産の上質な酒米など、素材へのこだわりはもちろん、県内でも数か所の酒蔵のみとなっている「自家精米」を行っています。
玄米を見極めた上で自由に精米歩合を決められるため、こういう酒を造りたいというこだわりをとことん追求することができます。

「酒造りは米と水が全て」と言われますが、尊皇ではさらに「人」がいなければ本当においしい酒は造れないと言います。
酒蔵の規模から見ると職人が多いとのことですが、それは馬鹿正直なくらい丁寧に手間をかけて妥協のない酒造りをしている証拠でもあります。

また、鑑評会等への出品酒についても、香りづけや酒質の安定を目的に醸造アルコールを添加した出品酒が多い中、尊皇では、実際にお客様に味わっていただくものと同じ品質で勝負したいというこだわりから、醸造アルコールを使用しない「純米大吟醸酒」でチャレンジした上で、入賞を果たすなど高く評価されています。

コロナ禍による売上の減少

一方で、近年の飲酒人口の減少や食事・アルコール飲料の多様化による日本酒離れがどんどん進む中、現状維持のままでは時代に取り残されてしまうとの想いから、「奥」などの特定名称酒や甘酒、蒲郡みかん「はるみ」を使用したリキュールなど新たな取り組みを進めてきました。
名鉄西尾・蒲郡線応援イベントとして始めた「尊皇酒蔵開き」では、回を重ねるごとにファンが増え、中には東京や大阪から訪れる方も見えるそうです。また、海外にも販路を拡大し、日本食ブームもあって今年は海外での売上が過去最高となりました。

そんな試行錯誤を繰り返している中で、急遽訪れた新型コロナウイルス感染症の影響により、尊皇も大きな打撃を受けます。
前年に比べ売上が半分以下になった月もあり、特に、各家庭での神棚へのお供えや神社への酒樽の奉納をはじめ、地元での売上が多い中で、飲食店の休業や地域のお祭りの中止、地元温泉街の宿泊客減少が売上に大きな影響を与えています。

クラウドファンディングへの挑戦

しかし、厳しい状況の中でも尊皇はあえて新たな取り組みに挑戦しています。
以前から商品開発の一環として「チャレンジタンク」と称し、毎年試験醸造を行ってきましたが、金融機関からの紹介もあり、昨年初めてクラウドファンディングに挑戦。

本来市場に出回ることのない試験醸造酒を「杜氏の挑み酒」としてクラウドファンディングサービス「Makuake」で限定販売したところ、普段は愛知県内での売上が6、7割を占める中、北海道から沖縄まで日本全国から多くの反響を集め、目標金額の倍近くの応援購入がありました。

「愛知県産山田錦」で造る「杜氏の挑み酒」

二回目の挑戦となる今回の「杜氏の挑み酒」のテーマは「愛知県産山田錦」。
「酒米の王」とも言われる山田錦は、一般的には兵庫県産が有名ですが、2019年4月に産地指定銘柄に認定されたことで「愛知県産山田錦」を名乗れるようになりました。
この地元の酒米を「自家精米」の技術を活かして鑑評会出品酒と同じ規格まで磨き上げた「純米大吟醸酒」でクラウドファンディングに挑戦。さらに、通常の出品酒では熱殺菌された「火入れ」しか市場に出回りませんが、今回は絞ったそのままの「生酒」もあわせて限定販売。
同じ酒でもさっぱりドライな味わいの「火入れ」に対し、「生酒」は旨みが多くフレッシュな味わいとなっており、酒好きにも日本酒ビギナーにも、ぜひ飲み比べてその違いを楽しんでほしいと語っていただきました。

どんな逆境に置かれても、変わらずこの地で酒を造っていくために日々試行錯誤しながら変わり続けていく。
遠く会えないあの人への贈り物やおうち時間の新たな楽しみに、尊皇の挑戦を味わってみてはいかがでしょうか。